軽視できないイエレン氏による「高圧経済」

目下の市場予想では12月と見られている米 FRB の利上げだが、その際にイエレン FRB 議長は「高圧経済 (high-pressure economy) 」で米国経済を刺激する必要があるだろうと発言している。

イエレン議長の発言に市場は今のところ大きく反応してはいないものの、このタイミングで「高圧経済」を掲げる背因は絶対に軽視できない。「高圧経済」とは、経済が長期的停滞局面から抜け出せるよう、継続的な需要成長と雇用市場の更なる逼迫を維持させることである。過去、元米財務長官ローレンス・サマーズ氏がすでに米国経済の長期的停滞について提唱していたが、イエレン氏の「高圧経済」はサマーズ氏の長期停滞論を認めることを意味する。もし「高圧経済」によって長期的経済成長を刺激するのであれば、FRB は利上げペースを緩める必要に迫られる可能性がある。

近年、米国雇用統計が好調となり、米国株も何度も最高値を更新していることから、米国経済は一見華やかな印象を与えている。しかし、注意深く見てみると、米国経済に弱化の兆しが潜んでいる事は容易に発見できるだろう。事実上、近月多くの人々が米国経済が来年衰退に踏み入る可能性を懸念している。経済先行きに弱化リスクが潜む中、イエレン氏が「高圧経済」で経済刺激を行うのも無理はない。今年残された FOMC で、利上げに踏み切るか否かは、FRB が米国の経済先行きをどう評価しているかに関わってくるだろう。もし利上げを行わないとなれば、つまり経済に弱化の兆しがあることを意味するため、そうなれば、金融市場の変動を引き起こすだろう。

米国のほか、欧州と中国本土も経済成長の長期的停滞局面に陥るかもしれない。経済を安定させるため、ECB (欧州中央銀行)が緊縮政策を行う可能性は見られない。中国本土では、経済指標に安定の兆しが見られるものの、「 L 字型」トレンドの横ばいがいつまで続くのかは予想が難しい。全体的に言って、世界経済は今まさに半死半生の困難な局面にあり、不幸なことに、現在に至るまで各主要経済体それぞれが難局を打破できる有効な手段を未だに見つけられていない。今年と比べ、来年の経済情勢は更に厳しく、投資リスクもより高いものとなるだろう。